占い師の弟子取りと、屋号・流派名の使用許諾

弟子に教える、名前を使わせる、仕事を手伝わせる。この3つを分けて書き、終わらせ方まで決めておくと、独立や破門の場面で争いが小さくなります。

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このページの要点

  • 弟子取りの書面は、教える・名を貸す・働かせるの3つに分け、それぞれに終わらせ方を書く。
  • 屋号や流派名は、知名度が足りないと法律だけでは守りにくく、使用許諾の契約で範囲・表示・品質・終了後を決める。
  • 認定は私的なものと添え、基準と取消しの理由を列挙し、取消しの前に弁明の機会を設ける。
  • 独立後の制限は、期間・地域・禁止する行為を絞り、顧客名簿は秘密として管理する。

最初に結論:弟子取りは「教える」「名を貸す」「働かせる」を分けて書く

結論占い師が弟子を取るときの書面は、技術を教える約束、屋号・鑑定名・流派名を使わせる約束、師の仕事を手伝わせたり鑑定を任せたりする約束の3つが、口約束のまま混ざりやすい分野です。3つを別々の条に分け、それぞれに終わらせ方を書いておくと、独立や破門のときに争いが小さくなります。

占いの世界では、「師匠について何年か修行し、やがて独り立ちする」という関係が今も珍しくありません。習い事の延長のように始まり、仲が良いうちは書面を作らないまま、教える・名乗らせる・手伝わせる・鑑定を回すといった関係が少しずつ積み重なっていきます。揉めるのはたいてい、弟子が独立するとき、師が弟子を外すとき、そして弟子が師の屋号や流派名を使ったまま別の場所で活動を始めたときです。

この記事では、占い師が個人で弟子を取る場面を中心に、実務でよく見られる論点を整理します。養成講座を事業として大きく運営する場合の受講契約書は占い師養成講座の受講契約書に必要な条項で、占い館や電話占いの会社に所属する側の契約は所属する占い師の契約で扱っています。ここでは、そこで触れきれない「名前の貸し借り」と「師弟関係の終わらせ方」に焦点を当てます。

弟子取りの書面で決める3つのこと

区分中身書面で決めておくこと
教える占術の講義、実技の指導、添削、鑑定の同席期間・回数・料金、中途でやめるときの精算、教材の権利、成果を保証しないこと
名を貸す屋号、鑑定名、流派名、認定の称号、ロゴを弟子が使うこと使える範囲と表示のしかた、料金の有無、品質の確認、取消しと終了後の扱い
働かせる師の鑑定の補助、受付、集客の手伝い、鑑定の割振り仕事の依頼なのか修行の一部なのか、報酬、時間の管理、顧客情報の扱い

「教える」だけの関係なら受講契約、「働かせる」が入るなら仕事の依頼としての整理が別に必要になります。

弟子は法的に何者として扱われますか:受講生・見習い・業務委託先の見分け方

最初に決めたいのは、弟子が師にとって「お金を払って教わる人」なのか、「働いて報酬を受ける人」なのかです。実務では、受講料を取りながら鑑定の手伝いもさせ、手伝いには報酬を払わない、という中間の形がよく見られます。この形は、修行の名目であっても実態が仕事なら、働いた分の対価を巡って争いになります。

弟子が師の指揮命令のもとで働き、賃金を受け取っているなら、労働基準法9条の「労働者」(職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者)に当たる可能性が出てきます。労働者に当たる場合、同法16条は、労働契約の不履行について違約金を定めたり損害賠償額を予定したりする契約を禁じています。「途中でやめたら違約金」「独立したら修行費用を返せ」といった条項は、弟子が労働者と評価される場合にはそのまま使えません。呼び名を「弟子」「修行生」にしても、実態で判断される点は変わりません。

一方、弟子が個人で、従業員を使わずに師から鑑定や集客の仕事を請け負う形なら、フリーランス法の「特定受託事業者」(同法2条1項1号)になり得ます。師が弟子に仕事を依頼すれば、師は「業務委託事業者」(同条5項)として、仕事の内容、報酬の額、支払期日などを書面または電磁的方法で明示する義務を負います(同法3条1項)。師が個人で従業員を使っていない場合でも、この明示の義務は及びます。

弟子との関係を整理する4つの問い

  1. 弟子は、師が決めた時間と場所で、師の指示に従って働いていますか。

    はい労働者と評価される材料になります。修行の名目でも、受付・電話番・SNS運用などを継続的にさせているなら、仕事として扱う前提で書面を作り直します。

    いいえ指導を受ける側として自分の判断で参加しているなら、教える契約として整理できます。

  2. 弟子の手伝いに対して、金銭か、それに代わる利益(鑑定枠の提供、紹介料など)を渡していますか。

    はい報酬のある仕事の依頼と見るのが自然です。金額・支払期日を決め、フリーランス法3条の明示を書面で行います。

    いいえ無償の手伝いは「修行の一部」と主張しやすい反面、続くほど実態は仕事に近づきます。範囲と期間を限ります。

  3. 弟子は、師から回された鑑定を、自分の名前で行っていますか。師の名前で行っていますか。

    はい弟子の名前で行うなら、弟子が独立した事業者として顧客と契約する形です。顧客情報や売上の取り分を別に決めます。

    いいえ師の名前で弟子が鑑定するなら、顧客は師の鑑定だと信じて申し込んでいます。表示の問題(広告表示の項で後述)が出ます。

  4. 弟子が受講料や認定料を払っていますか。

    はい弟子が個人で、事業としてではなく学ぶ立場なら、消費者契約法が適用され得ます。中途解約の精算は平均的な損害の範囲に収めます。

    いいえ弟子が既に事業者として申し込むなら、消費者契約法の適用は想定しにくくなりますが、民法90条や信義則による歯止めは残ります。

1つの関係に複数の性質が重なるのが普通です。どれか1つに決めつけず、性質ごとに条を分けて書くのが安全です。

師弟の関係は、民法上は「事務の委託」に近く、委任・準委任(民法643条・656条)の規定が参考になります。委任は、各当事者がいつでも解除できますが、相手方に不利な時期に解除したときなどは、やむを得ない事由がない限り損害を賠償する必要があります(民法651条)。つまり、弟子が試験の直前に突然去る、師が弟子の独立準備の最中に一方的に破門する、といった場面では、書面がなくても賠償の問題になり得ます。だからこそ、やめるときの手順と精算を、あらかじめ書面に落としておく意味があります。

屋号・鑑定名・流派名は誰のものか:守れるものと守りにくいもの

弟子取りの書面で一番揉めやすいのが名前です。師は「自分の名前を使われたくない」と考え、弟子は「自分もそこで修行した以上、名乗りたい」と考えます。名前の保護には、使い方に応じた手段があり、すべてが同じ強さで守られるわけではありません。

名前・教えのどれを、何で守るか

対象主な守り方注意点
屋号・鑑定名(占い師としての名前)不正競争防止法(広く知られていれば、混同を生じさせる使用の差止めなど)、商標の登録知名度が足りないと不正競争防止法の保護は受けにくく、登録していなければ契約が頼りになります
流派名・メソッド名(「〇〇式」など)商標の登録、契約による使用の制限名前だけを守っても、占術のやり方そのものを独占することにはなりません
テキスト・動画・図表・ロゴ著作権(表現が対象)、契約による複製・転載の禁止占いの理論やアイデアそのものではなく、書かれた表現が保護の対象です
顧客名簿・予約情報・集客の仕組み不正競争防止法の営業秘密、秘密保持の約束秘密として管理されていなければ営業秘密になりません

「師から習ったやり方」を弟子が独立後に使うこと自体は、技術の性質上、制限しにくいのが実情です。

不正競争防止法は、他人の商品等表示(氏名、商号、商標、営業を表示するもの)として需要者の間に広く認識されているものと同一または類似のものを使い、他人の商品や営業と混同を生じさせる行為を、不正競争としています(同法2条1項1号)。著名な表示を自己の表示として使う行為も対象です(同項2号)。これに当たれば、営業上の利益を侵害された者は、侵害の停止や予防を請求でき(同法3条)、故意または過失があれば損害賠償も求められます(同法4条)。

ただし、この保護には限界があります。まず、「広く認識されている」ことが前提で、開業して間もない占い師の屋号では立証が難しくなります。次に、自己の氏名を不正の目的なく使う行為は適用が除かれます(同法19条1項2号)。弟子が自分の本名で活動すること自体は、原則として止められません。さらに、他人の表示が広く認識される前から同一・類似の表示を不正の目的なく使っていた者には、先に使っていた事情が認められる余地があります(同項4号)。弟子が師より先に似た鑑定名を使っていたような場合です。

こうした事情から、名前を弟子に使わせるなら、「使ってよい」と許す側の契約を整え、使ってはいけない場面を契約で決める方法が、争いを小さくします。商標の登録は特許庁に出願して行うもので、登録がなくても契約上の使用許諾は結べますが、登録があれば第三者に対しても名前を守りやすくなります。この記事では、契約上の決め方に絞って説明します。

名称使用の許諾は、範囲・表示・品質・終了後の4点で組み立てる

弟子に屋号や流派名を使わせるときの条項は、「使ってよい」の一言では足りません。実務で用いられる使用許諾の条項は、おおむね次の4点で組み立てられています。

  1. 範囲:どの名称を、どの場面(名刺、ホームページ、SNS、鑑定メニュー、看板)で、日本国内か海外か、期間はいつまで使えるのか。独占か非独占か、第三者への再許諾(孫弟子に使わせること)を認めるか。
  2. 表示:「〇〇流認定鑑定士」のように、正式な呼び方と書き方を決める。師の公式であるかのような表示(本家、直営、公式)を禁じる。ロゴは加工しない。
  3. 品質:師が、使用状況の報告を求めたり、不適切な表示の修正・削除を求めたりできる。苦情や事故が続いたときの扱いを決める。
  4. 終了後:契約の終了、認定の取消し、退会のとき、いつまでに何を削除するか。削除の完了を報告させるか。在庫の名刺やチラシをどうするか。

使用許諾は、所有権の移転のように「渡してしまう」のではなく、「期間と条件を限って使わせる」ものであることを、条文の冒頭で明らかにしておきます。名称そのものの権利は師に残ること、弟子が同じ名称や似た名称を自分で登録出願したり、ドメイン名やSNSアカウント名に使ったりしないことも、あわせて書いておくと安心です。弟子が先に出願してしまうと、師の側が後から使えなくなるおそれがあるためです。

名称使用の許諾の条文例(説明用に書き起こしたもの)

1師は、弟子に対し、本契約の有効期間中に限り、屋号「〇〇」及び流派名「〇〇式」(以下「本名称」という。)を、次項に定める方法により、日本国内で、非独占的に使用することを許諾する。この許諾は、本名称に関する権利を弟子に移転するものではなく、弟子は、本名称を第三者に使用させてはならない。

2弟子が本名称を使用できるのは、名刺、自己のホームページ、SNSのプロフィール及び鑑定メニューに限る。弟子は、「〇〇流認定鑑定士」の表記を用い、師の公式の鑑定であるかのような表示、師の運営であるかのような表示をしてはならない。

3弟子は、本名称又はこれに類似する名称について、自ら又は第三者を通じて、商標の出願、ドメイン名の取得、アカウント名への使用をしてはならない。

4師は、弟子による本名称の使用状況について報告を求め、表示の修正又は削除を求めることができる。弟子は、求めを受けたときは、〇日以内にこれに応じる。

5本契約が終了したとき、又は第〇条の認定が取り消されたときは、弟子は、直ちに本名称の使用を中止し、〇日以内に、自己の管理する媒体から本名称を削除して、その完了を師に報告する。

括弧内の日数や名称は空欄で示しています。「類似する名称」は範囲が広がりやすいため、禁止する場面を第3項のように具体的に限ると、有効性を説明しやすくなります。

認定・段位・称号を出すとき:権威があるように見せない

師が弟子に「認定」「師範」「〇級」といった称号を与える運用もよく見られます。この称号は、国の資格や公的機関の認定ではなく、師が自分の判断で付ける私的な認定です。そのこと自体に問題はありませんが、表示のしかた次第で、お客様に「公的な資格を持っている」「権威ある団体が認めた」と受け取られると、景品表示法の優良誤認表示(実際よりも著しく優良であると示す表示)が問題になります。称号の説明には「当教室が独自に定める認定です」と添える運用が、安全です。広告の書き方は占い師の広告表示にまとめています。

認定の条文では、審査の基準と手続を、後から問われても説明できる形に書いておきます。「師の判断に異議を述べない」とだけ書く例は、判断の恣意性を疑われやすく、争いになったときに師の側が不利になります。基準(出席回数、実技の課題、倫理規範の理解など)と、取消しの理由(虚偽の表示、顧客への不当な勧誘、秘密の漏えいなど)を列挙し、取消しの前に弁明の機会を設ける形にすると、運用の公平さを説明しやすくなります。

認定から取消し・終了までの流れの例

  1. 講習・実技の修了決めた回数の講義と、実技の確認を終えた段階です。この時点では、まだ名称は使えません。
  2. 認定の通知師が基準に照らして審査し、書面または電磁的方法で認定を通知します。名称の使用許諾は、この通知の日から始まります。
  3. 活動中の確認使用状況の報告、苦情への対応、表示の修正の依頼を行います。更新制にするなら、更新の時期と基準もここで決まります。
  4. 取消し・退会取消しの理由に当たるとき、師は理由を示して通知し、弟子に弁明の機会を与えます。退会は弟子からも申し出られます。
  5. 終了後の措置名称の削除、教材・認定証の返却または廃棄、完了の報告を、期限を決めて行います。

認定の効力が、通知の日から始まり、取消しや退会の日に終わると書いておくと、名称を使える期間が一目で分かります。

認定を受けた弟子が、さらに自分の弟子を取って認定料や受講料を受け取る仕組み(孫弟子)を認める場合は、注意が必要です。取引に参加した者が、次に参加する者から取引料を受け取れるという利益で勧誘する形は、特定商取引法の連鎖販売取引に当たるおそれがあります。また、師が弟子に「鑑定の仕事を回す」と勧誘し、その仕事に就くために費用を払わせる形は、業務提供誘引販売取引の問題になります。これらの判定の考え方は養成講座の受講契約書の項で解説しています。弟子取りの書面を作る段階で、孫弟子を認めるか、紹介の報酬を設けるかを先に決めておくと、取引の類型の確認がしやすくなります。

よくある失敗と直し方:弟子取りの書面で見られる条項

弟子取りの書面でよく見られる誤りと、直し方の方向を整理します。条文は、説明のために書き起こした例です。

弟子取りの書面で見られる条項の書き換え

途中でやめるとき

避けたい言い方一度払った受講料・認定料は、いかなる理由があっても返金しない。
書き換え例開始前は事務手数料を除いて返金する。開始後は、実施済みの回数に応じた受講料相当額と、算定の根拠を示せる手数料を控除して返金する。ただし、法令に基づく権利を妨げない。

弟子が個人の学習者なら消費者契約法9条1項1号により、平均的な損害を超える部分は無効です。「いかなる理由でも返金しない」は、条項全体が疑われる原因になります。

認定の判断

避けたい言い方認定の可否・取消しは師の裁量による。弟子は異議を述べない。
書き換え例認定は、別に定める基準に照らして行う。取消しは、第〇条各号の理由がある場合に限り、理由を示して通知し、弁明の機会を与えたうえで行う。

異議を封じる条項は、実際の争いで機能しにくく、基準を示して運用した方が師の判断の正当性を説明しやすくなります。

独立後の制限

避けたい言い方退会後も、師の流派と似た活動を一切してはならない。
書き換え例退会後2年間、日本国内で、師が提供した教材の構成をそのまま用いた同種の講座を開くことを禁じる。弟子が自分の鑑定を行うことは妨げない。

憲法22条の職業選択の自由との関係で、期間・地域・禁止する行為の範囲が欠けた競業の制限は、有効性を認められにくくなります。

違約金

避けたい言い方名称の無断使用があったときは、違約金として一律100万円を支払う。
書き換え例無断使用があったときは、差止めのほか、実際に生じた損害を賠償する。違約金を定めるなら、使用の期間や態様に応じた算定の方法を示す。

民法420条は違約金を賠償額の予定と推定します。一律の高額は、実損との開きを理由に争われ、かえって弱い条項になります。

孫弟子

避けたい言い方弟子は、自由に自分の弟子を取って、本名称を使わせてよい。
書き換え例弟子が第三者に本名称を使わせるには、師の事前の書面または電磁的方法による承諾を要する。承諾する場合の条件は別に定める。

自由に再許諾できる形は、品質の確認ができず、名称の評判を守れません。連鎖販売取引の確認もできなくなります。

書き換え例は考え方を示すもので、そのまま使えるわけではありません。弟子の立場(消費者か事業者か)と取引の実態で調整します。

もうひとつ、実務でよく見られる誤りは、「モデル契約書」をそのまま持ってきて、弟子取りの実態に合わない条項が混ざることです。たとえば、毎月の会費を前提にした退会の条項が、一括払いの修行の約束の中に入っていると、同じ書面の中で矛盾が生じます。弟子の月謝が毎月発生する形なのか、期間全体の対価を一括または分割で受け取る形なのかを、先に決めてから条文を選びます。

独立・破門・師の引退のとき:名称と顧客の引継ぎ

弟子取りの書面で、いちばん使われるのは、関係が終わるときの条項です。ここでは3つの場面に分けて、決めておくことを整理します。

終わり方ごとに決めておくこと

場面決めておくこと条項の工夫
弟子が独立する(円満)名称を使える期間、独立の告知のしかた、引き継ぐ顧客独立後〇か月は「元〇〇流」と書ける、というように、経歴の表示を認める範囲を決める
師が弟子を外す(破門・認定取消し)理由の通知、弁明の機会、名称と教材の返却理由を列挙し、通知から削除までの期限を置く。即時の削除が必要な場合と猶予を置く場合を分ける
師が引退・死亡する名称を誰が引き継ぐか、弟子の地位、前払い分の精算契約上の地位が相続されるかどうかを書き、継続できない場合の返金の扱いを決める

経歴の表示(「元〇〇流」「〇〇に師事」)は、事実であっても誇張すれば誤認を生みます。許す表示を具体例で示すと争いが減ります。

顧客の扱いも、揉めやすい点です。弟子が師の鑑定の場で出会ったお客様を、独立後に自分の顧客として勧誘することを禁じる条項を置く例があります。ただし、お客様が自分で選んで弟子の鑑定を受けるのまで止めることは難しく、禁止する範囲は「師が弟子に引き継がせていない顧客の名簿を使った勧誘」のように、情報の使い方に絞ると有効性を説明しやすくなります。顧客名簿を営業秘密として守るには、秘密として管理されていることが要件です(不正競争防止法2条6項)。LINEのグループに名簿を共有して誰でも見られる状態だと、この要件を満たさないおそれがあります。閲覧できる人を限り、持ち出しを禁じ、終了時に削除させる運用が前提になります。お客様の個人情報の扱いは占い相談の個人情報と守秘義務で整理しています。

弟子が師のもとで作った教材、鑑定のテンプレート、ブログ記事の権利も、決めておく点です。弟子が作った文章や図の著作権は、特に定めがなければ弟子に残ります(師が使用者として従業員に作らせた場合の職務著作は、著作権法15条に別の定めがありますが、弟子が労働者であることが前提です)。師が教材として使い続けたいなら、利用の許諾か譲渡を契約で決めます。譲渡するなら、著作権法27条・28条の権利を譲渡の目的として特掲しないと、これらの権利は譲渡した側に留保されたものと推定されます(同法61条2項)。著作者人格権は譲渡できないため(同法59条)、行使しない旨の約束も合わせて置きます。

退会後の名称・経歴の表示に関する条文例(説明用に書き起こしたもの)

1弟子は、退会又は認定の取消しの後、本名称を使用してはならない。ただし、事実に即して、「かつて師の下で学んだ」旨を、次項の範囲で表示することができる。

2前項の表示は、プロフィール欄に「〇〇に師事(〇年〜〇年)」と記載する方法に限り、師の公式の鑑定、提携又は推奨を受けているかのような表示を含んではならない。

3弟子は、師が引き継ぎを承諾していない顧客の連絡先を、本契約に基づく活動の過程で知り得た情報として利用し、勧誘に用いてはならない。ただし、顧客が自らの意思で弟子の鑑定を申し込むことを妨げない。

4師は、弟子から求めがあったときは、前項の顧客に関する情報の削除又は返却を、弟子に求める。

「師事」の表示を認める条項は、経歴の誇張を防ぎつつ、弟子の営業の自由も尊重する折衷の書き方です。

精算の計算例(金額は説明用)

前払いの修行が途中で終わったときの精算を、数字で確かめます。受講料が全6回で36万円、1回あたり6万円の例です。第3回の実施後に、弟子の都合でやめたとします。提供済みの3回分は18万円です。実施していない3回分は18万円で、ここから、準備のために実際にかかった費用(会場の予約の取消料など)や、算定の根拠を示せる手数料を引いて返金します。仮に実費が3万円なら、返金は15万円です。「開始後は一切返金しない」とした場合に比べ、平均的な損害を超える部分が無効とされる危険が小さくなります。

弟子の側が事業者で、消費者契約法が適用されない場合でも、実際に生じる損害から大きくかけ離れた額は、公序良俗に反するなどの理由で争われ得ます(民法90条)。計算の根拠を、書面に残しておきます。

ヒヤリングで確認すること:弟子取りの書面を作る前の質問

弟子取りの書面は、事業の実態を聞き取ってから起案します。実態に合わない書面は、使われないか、使われても揉めたときに役に立ちません。

弟子取りの書面を作る前に確認すること

  1. 弟子に教えること、使わせるもの、手伝わせることを、それぞれ書き出してもらえますか。3つが混ざっているかどうかで、書面の構成が決まります。手伝わせる内容が継続的で指示を伴うなら、仕事としての整理が必要です。
  2. 弟子は、お客様に対して誰の名前で鑑定しますか。師の名前で弟子が鑑定する運用は、お客様の誤認を招きます。弟子の名前なら、弟子の独立した契約になります。
  3. 使わせたい名称は、屋号ですか、鑑定名ですか、流派名ですか。商標の出願はありますか。名称ごとに守り方が違います。出願がなければ、契約で禁止する行為を具体的に書く必要が高まります。
  4. 弟子が、別の弟子を取ることを認めますか。紹介の報酬を設けますか。連鎖販売取引や業務提供誘引販売取引の確認が必要になるかどうかが分かれます。先に方針を決めておくと、後の書面の手戻りが少なくなります。
  5. 認定の基準と、取消しにしたい行為は何ですか。基準が頭の中にあるだけだと、条文にできません。具体的な行為を挙げてもらうと、取消しの理由を列挙できます。
  6. 弟子が独立する場合、お客様の引継ぎをどう考えていますか。名簿は誰がどこで管理していますか。管理の状況が、営業秘密として守れるかを左右します。管理の実態に合わせて、禁止する行為を決めます。
  7. 弟子は、個人として学ぶ人ですか、すでに事業として占いをしている人ですか。消費者契約法が適用されるかどうかの出発点です。中途解約の精算の設計が変わります。

回答の内容によっては、受講の契約、使用許諾の契約、仕事の依頼の書面を、別々に作る方が運用しやすくなります。

弟子取りの書面の点検リスト

  • 教える・名を貸す・働かせるが、別の条(または別の書面)に分かれている
  • 弟子が仕事をする場合、報酬・支払期日・仕事の内容が書面または電磁的方法で明示されている
  • 名称の使用許諾が、範囲・表示・品質の確認・終了後の削除の4点を備えている
  • 認定の基準と取消しの理由が列挙され、取消しの前の弁明の機会がある
  • 中途解約の精算が、時期の区分と算定の根拠で書かれている
  • 独立後の制限が、期間・地域・禁止する行為の範囲を絞って書かれている
  • 顧客名簿の管理方法と、終了時の削除・返却が決まっている
  • 「公的資格」と受け取られる表示を避け、私的な認定であることを添えている

弟子取りで起きがちなことと備え

最後に、実務で多い場面と、書面でできる備えをまとめます。

書き方のポイント弟子取りの書面は、仲が良いうちに作るほど穏やかに合意できます。関係が悪くなってから初めて作る書面は、片方にとって不利な条項に見え、署名を得にくくなります。すでに弟子がいる場合も、新しい書面は「これからの決まり」として示し、過去の扱いを遡って変える書き方は避けます。

よくあるご質問

弟子から受講料を取らず、手伝いをしてもらうだけなら、書面は不要ですか?

不要とは言えません。受講料がなくても、手伝いが継続的で、指示を伴うほど、実態は仕事に近づきます。手伝いの範囲と期間、報酬の有無、名称を使わせるかどうかを書面に残しておくと、後から報酬や処遇を巡って争う場面に備えられます。

弟子が本名で占いを始めた場合、師は止められますか?

自己の氏名を不正の目的なく使う行為は、不正競争防止法の適用が除かれる場合があります(同法19条1項2号)。本名での活動自体は止めにくいため、契約で、師の屋号や流派名を使うこと、師の公式であるかのように見せることを禁じる形にします。

独立後の競業を禁止する条項は有効ですか?

期間、地域、禁止する行為の範囲、制限に見合う対価や配慮などを総合して判断されます。『一切の同種の活動を禁止』のような広い書き方は有効性を認められにくくなります。教材の構成をそのまま使った講座の開催を禁じるなど、守りたいものに絞って書きます。

『認定占い師』という称号を、広告に載せてもよいですか?

載せること自体は可能ですが、国の資格や公的機関の認定のように受け取られる表示は、景品表示法の優良誤認表示になるおそれがあります。『当教室が独自に定める認定です』と添え、審査の基準が実際にあることも確かめておきます。

弟子が別の弟子を取って、名称を使わせることはできますか?

師の承諾なしに認める形は避けた方が安全です。孫弟子から認定料や受講料を受け取る仕組みは、特定商取引法の連鎖販売取引に当たるおそれがあります。認めるなら、事前の承諾と条件を書面で決めます。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の事業への当てはめは、提供する内容、料金の受け取り方、勧誘の方法、お客様が事業者か個人かなどによって異なります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 消費者契約法(消費者庁) / 景品表示法(消費者庁) / 国民生活センター

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