このページの要点
- 「必ず当たる」「運命の人に出会える」などの断定は、優良誤認、誇大広告、不実告知にまたがって問題になる。
- 的中率・鑑定実績・ランキングなどの数字は、数え方・期間・出典を併記し、裏付けの資料を保存する。
- 口コミを依頼し、内容に関与した場合は、事業者の表示としてステマ規制の対象になり得る。
- 契約書の非保証条項は広告の誇大表示を打ち消さない。広告と契約書を同じ目線で読み比べる。
最初に結論:表示のルールは、規約ではなく「広告そのもの」に及ぶ
占い師の集客は、SNS、ブログ、動画、販売ページ、口コミサイトなど、ほとんどが広告を通じて行われます。そのため、規約や契約書をどれだけ整えても、集客の文章が誇大であれば、その文章が理由で、行政の指導や、契約の取消しの主張を受ける可能性があります。契約書では結果を保証していないのに、販売ページでは「必ず運命の人に出会えます」と書いてあるという食い違いは、事務所が点検するサービスでも、しばしば見つかる問題です。
ここで整理するのは、占い・スピリチュアルの宣伝でよく使われる言葉が、どの法律のどの規定に関わるか、どの程度なら問題がないかです。個別の表現が違法かどうかは、表示全体から一般消費者が受ける印象で判断されるため、一律の答えはありませんが、点検の観点は整理できます。
広告の表示に関わる主な規定
- 景品表示法5条1号(優良誤認表示)商品・役務の品質、規格その他の内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示。不当に顧客を誘引し、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあるもの。
- 同法5条2号(有利誤認表示)価格その他の取引条件について、実際のものや他の事業者のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示。
- 同法5条3号・ステマ告示一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(令和5年内閣府告示第19号、令和5年10月1日施行)。
- 同法7条2項・8条3項優良誤認が疑われる表示について、期間を定めて、裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。提出しないと、措置命令では優良誤認とみなされ、課徴金納付命令では推定される。
- 同法8条1項・48条優良誤認・有利誤認の表示には、課徴金(対象売上額の3%)の制度がある。優良誤認・有利誤認の表示をした者には、100万円以下の罰金の直罰規定がある。
- 特定商取引法12条・12条の2通信販売の広告で、役務の内容などについて、著しく事実に相違する表示、実際より著しく優良・有利と誤認させる表示は禁止。裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められ、提出しないと誇大広告とみなされる。
- 消費者契約法4条1項・3項広告も「勧誘」に当たり得る。事実と異なる告知(1項1号)、将来の金額などについての断定的判断の提供(1項2号)、霊感等による不安のあおり(3項8号)は、契約の取消しの対象。
景品表示法の直罰の規定は、令和5年の改正により整備され、令和6年10月1日から施行されています。罰金額の上限は100万円です。
「必ず当たる」「運命の人に出会える」:断定の表現
占いの結果は、実証が難しいものです。そのため、「必ず当たる」「100%的中する」「この鑑定を受ければ運命の人に出会える」といった断定は、客観的な根拠を示せません。景品表示法の優良誤認、特定商取引法の誇大広告、消費者契約法の不実告知(4条1項1号)などと、複数の規定にまたがって問題になります。
相談を受ける中で見かけるのは、ランディングページでは「3か月で人生が劇的に変わります」「必ず理想のパートナーに出会えます」と派手な言葉が使われているのに、契約書には保証の不存在について一切触れていないケースです。広告文と契約文が一貫していないことが、トラブルの元です。広告で約束したことは、契約の内容として主張される余地があります。
占いの広告表現の書き換え
的中を断定
的中は検証が難しく、根拠を示せません。「当たる」の断定をやめ、鑑定の方法や内容を説明する文にします。
結果の約束
結果の実現を約束する表現は、不実告知や優良誤認につながります。提供する内容を説明します。
霊視・能力の強調
能力の存在を前提にした表現は、実証できません。サービスの方法として説明し、保証しない旨を近くに添えます。
緊急性の演出
期限と不安を結び付ける表現は、霊感等による不安のあおりの問題になります。
打消し表示(「効果には個人差があります」など)は、強調した表示の近くに、読み取れる大きさで示さなければ、効果が認められません。
的中率・鑑定実績・ランキング・No.1:数字と順位の表示
「的中率98%」「鑑定実績1万人」「口コミ評価No.1」といった数字や順位は、説得力があるため、よく使われます。同時に、根拠の裏付けを求められやすい表示でもあります。景品表示法7条2項は、優良誤認が疑われる表示について、期間を定めて、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、提出しなければ、措置命令との関係では、その表示は優良誤認とみなされると定めています。特定商取引法12条の2にも、同じ仕組みがあります。
数字・順位の表示と、根拠の考え方
| 表示 | 問題点 | 備えること |
|---|---|---|
| 的中率〇% | 何をもって的中とするのかを客観的に定義できない。調査の方法が検証できない | 原則として使わない。使うなら、定義、対象、期間、集計の方法を記録する |
| 鑑定実績〇人(〇件) | 数え方(延べ人数か実人数か)、期間が不明確だと誤認を招く | 数え方と期間を併記し、実際の記録を保存する |
| 口コミ評価No.1・第1位 | 調査の方法が不適切だと、根拠のない表示になる | 公正取引委員会の考え方では、比較対象の選定、調査対象者の選定、調査の方法、表示内容と調査結果の対応が適切であること |
| 〇〇ランキング掲載 | 掲載の事実だけを示すのか、順位を示すのかで印象が違う | 出典、調査の主体、時期、対象の範囲を明記する |
No.1表示については、公正取引委員会が平成20年に実態調査報告書を公表し、第三者の主観的評価を指標とする場合に合理的な根拠といえるための要件として、比較する商品等の選定、調査対象者の選定、調査の公平な実施、表示内容と調査結果の対応の4点を示しています。令和6年には消費者庁も、No.1表示に関する実態調査の報告書を公表しています。
表示した数字の裏付けは、表示を始める前に用意しておく必要があります。鑑定件数の記録、アンケートの原データ、調査会社との契約書など、後から求められたときに提出できる形で保存します。「個人の感想です」という注記では、数字そのものの根拠は補えません。体験談や実績の数字を使う場合は、それが一般的な結果ではない旨の打消し表示を、体験談や数字と一体的に認識できる形で、明瞭に示します。
口コミ・体験談の依頼と、ステマ規制
令和5年10月1日から、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示は、景品表示法5条3号に基づく告示により、不当表示として禁止されています。いわゆるステルスマーケティング規制です。規制の対象は広告主である事業者で、第三者の口コミのように見える投稿でも、実際は事業者が内容に関与していれば、事業者の表示に当たります。
口コミの依頼とステマ規制の考え方
| 場面 | 事業者の表示にあたるか | 対応 |
|---|---|---|
| お客様が自分の意思で、自由に感想を書いた | 原則として、事業者の表示にはあたらない | 事業者が内容に口を出さない。転載するなら、掲載の同意を得る |
| 無料鑑定や割引と引き換えに、感想の投稿を依頼した | 事業者が表示内容に関与しており、事業者の表示にあたり得る | 投稿に「PR」「広告」などと、広告であることが分かる表示を求める |
| 事業者が文面を用意して、投稿してもらった | 事業者の表示にあたる | 広告であることを明示する。依頼の記録を残す |
| インフルエンサーに依頼して、紹介してもらった | 事業者の表示にあたる | 契約で、広告であることの表示の方法、確認の手順、責任を決める |
判断の基準は、運用基準が示す「事業者の関与」の有無です。関与の程度は、依頼の方法、対価の有無、内容の指示の有無などを見て、個別に判断されます。
表示のあり方は、SNS運用や広告運用の代行を使う場合には、代行業者との契約の問題にもなります。PR表記の判断主体、確認の手順、問題が見つかったときの対応を決めておく必要があります。ステルスマーケティング規制そのものの詳しい解説は、このページの末尾の関連ガイドにあるSNS運用代行のページが扱っています。
メディア実績・資格・経歴:事実と、肩書の見せ方
「テレビ出演多数」「雑誌掲載」「著書〇冊」「認定〇〇鑑定士」「鑑定歴20年」といった経歴や資格の表示も、実績の優良さを示す表示として、景品表示法の優良誤認の対象になり得ます。事実と違う、または事実の一部だけを切り出して大きく見せる表示が問題です。
- メディアへの出演・掲載:どの番組・媒体に、いつ、どのような形で出たのかを正確に書きます。一度の短い出演を「テレビで話題」と書く、広告として出稿した記事を、取材された記事のように見せる、といった表示は避けます。
- 資格・認定:民間団体が出す認定は、国家資格とは別物です。公的な資格であるかのような印象を与える表示は避け、認定の主体を明記します。自分が運営する団体が出す認定を、第三者機関による認定のように見せることも避けます。
- 経歴・鑑定歴:年数や実績は、実際の記録に基づきます。
- 写真・肖像:本人以外の写真や、加工しすぎた写真は、誤認を招きます。鑑定者としての肖像を載せるなら、現在のものにします。
価格・割引・限定の表示
占いの料金に関する表示は、有利誤認表示の対象です。「通常価格〇円のところ、本日限り半額」と書きながら、実際には通常価格で売ったことがない、あるいは、いつも半額で売っているという場合は、実際よりも有利であると誤認させる表示になります(景品表示法5条2号)。「先着10名様限定」と書いておきながら、定員を超えても受け付ける、「本日締切」を毎日掲げ続ける、といった表示も、同様に問題になります。
通信販売の広告には、価格、支払の時期と方法、役務の提供時期、申込みの撤回・解除に関する事項、事業者の氏名・名称、住所、電話番号などを表示する義務もあります(特定商取引法11条)。氏名や住所をどう表示するか(ビジネスネーム、請求があったときに遅滞なく開示する方法など)は、通信販売の表示全般の論点として、オンライン鑑定の利用規約とあわせて、販売ページの設計の中で整理します。
無料の占いコンテンツから有料の鑑定へ:導線の表示
集客のために、無料の占いコンテンツ(今日の運勢、簡易診断、無料メール鑑定)を設け、そこから有料の鑑定やコースへ案内する形がよく見られます。この導線は、表示と勧誘の双方の問題になります。「無料」と大きく表示しながら、続きを見るには有料の登録が必要である、無料の鑑定の途中で有料のポイントの購入に誘導される、といった構成は、取引条件についての誤認を招きます。価格その他の取引条件について、実際のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示は、景品表示法5条2号の有利誤認表示にあたり得ます。
国民生活センターが令和2年11月26日に公表した占いサイトに関する注意喚起は、無料のつもりが有料に誘導されること、自分だけに向けられたように感じさせるメッセージで引き込まれることを、トラブルの典型としています。無料の部分と有料の部分の境目、料金が発生するタイミング、解約の方法を、申込みの前の画面で分かるように示すことが、表示の面での備えです。申込みの確定ボタンの前には、分量、価格、支払の時期、申込みの撤回・解除の条件などを分かりやすく表示する義務があります(特定商取引法12条の6)。
広告の点検の進め方:媒体ごとに表示を棚卸しする
表示の点検は、思いつきで文章を直すより、媒体ごとに表示を一覧にして、同じ観点で確認するほうが漏れません。次の表のように、媒体ごとに、確認する項目を決めておきます。
媒体ごとの点検項目
| 媒体 | 表示の例 | 確認する項目 |
|---|---|---|
| 販売ページ・LP | サービスの説明、料金、キャンセル条件、体験談 | 断定表現、数字の根拠、打消し表示の位置、特定商取引法の必要事項、申込み画面の表示 |
| SNSの投稿・プロフィール | 短い宣伝文、鑑定の事例、実績の数字 | 短い文での断定、PRの表示、事例の同意、プロフィールの経歴 |
| 動画・配信 | 鑑定の様子、視聴者の声、概要欄 | 話し言葉での断定、画面上の注記の表示時間、概要欄の記載 |
| メールマガジン・LINE | 個別の案内、キャンペーン | 不安をあおる件名、期限の演出、配信の停止の方法 |
| 口コミサイト・ポータル | 評価、順位、レビュー | 事業者の関与の有無、ランキングの根拠、広告の表示 |
表の項目に沿って、見つかった表現を「断定」「数字」「経歴」「価格」「口コミ」のどれに当たるかを分類すると、直し方の方針が決まります。
点検の結果は、日付とともに記録に残します。後から行政や消費生活センターから表示の根拠を尋ねられたとき、いつの時点でどのような点検をし、根拠となる資料が何だったのかを示せることが、実際には最も有効な備えになります。また、表示を直した場合は、直す前の表示のスクリーンショットも保存しておきます。
鑑定事例の掲載と、相談者の同意
鑑定の事例やお客様の声を載せるときは、相談者の同意が必要です。事例の掲載は、個人情報の利用の問題であると同時に、表示の問題でもあります。実在しない事例を作ったり、複数の事例を組み合わせて一人のように見せたりすることは、誤認を招きます。同意の取り方と匿名化は占い相談の個人情報と守秘で、表示の側の注意は、このページで述べた打消し表示や根拠資料の考え方に従います。
表示の点検では、一つ一つの表現が許されるかどうかを考える前に、「その表現で、お客様に何を約束したことになるのか」を問います。広告で約束したことは、契約書に書かれていなくても、契約の内容として主張される余地があります。反対に、広告に書いていないことを、契約書の細かい条項だけで押し付けることもできません。広告と契約書を同じ目線で読み比べて、約束の範囲が一致しているかを確かめます。
広告・表示の点検
- 的中や結果を断定する表現を使っていない
- 数字(実績、順位、的中率)を使う場合、数え方、期間、出典を併記し、裏付けの資料を保存している
- 体験談を使う場合、一般的な結果ではない旨を、体験談と一体で明瞭に表示している
- 口コミを依頼した場合、広告であることが分かる表示を求めている
- メディア実績・資格・経歴の表示が事実に基づいている
- 価格・割引・限定の表示が、実際の販売と一致している
- 広告の表現と、規約・契約書の保証しない旨が食い違っていない
広告の表現は、霊感商法と契約の取消しで扱う勧誘の問題とも、高額コースの取消しの問題とも重なります。あわせて確認してください。
よくあるご質問
「当たる占い師」と書くこと自体が違法ですか?
断定的に「必ず当たる」と示すと、実証できない優良さを示す表示として問題になり得ます。「当たる」の語を使う場合も、客観的な根拠を示せない程度に強い断定は避け、鑑定結果は参考情報であり当たることを保証しない旨を近くに示します。
「鑑定実績1万人」と書くときに、気をつけることは何ですか?
延べ人数か実人数か、いつからいつまでの数字かを併記し、実際の記録を保存しておきます。合理的な根拠を示す資料の提出を求められたとき、示せなければ優良誤認とみなされることがあります(景品表示法7条2項)。
お客様の感想を、SNSやLPに載せてもよいですか?
掲載には、お客様の個別の同意が要ります。匿名化しても、組み合わせで本人が分かる場合は同意が必要です。載せる内容が、一般的な結果でないのに得られるかのように見える場合は、打消し表示を一体的に示します。
知人やお客様に、口コミの投稿を頼んでもよいですか?
頼むこと自体は禁止されていませんが、事業者が関与した表示は、事業者の表示として扱われます。ステルスマーケティング規制により、広告であることが分かる表示が必要です。対価の提供や内容の指示があれば、特に注意が必要です。
契約書に効果を保証しないと書いてあれば、広告で効果を強調しても大丈夫ですか?
大丈夫ではありません。契約書の非保証の条項は、広告の誇大な表示による責任を打ち消しません。広告の表現と契約書の内容は、一致させる必要があります。
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