このページの要点
- 予約制は時間の枠、納品型は着手後の作業、継続セッションは体制の確保と実施済みの回数が、損害を考える軸になる。
- 変更・取消しの期限、遅刻の待機時間、不参加のみなしは、時間や日数の数字で書き、到達時刻で判定する。
- 鑑定後の質問は、期間・回数・回答の期限を決め、超える質問は新たな申込みとして受ける。
- 外部の販売サービスでは、契約の成立時期と手続がサービスごとに違うため、優先順位まで規約に書く。
最初に結論:予約・キャンセルの規定は、鑑定の形(予約制・納品型・継続)ごとに分けて書く
対面やオンラインで日時を決めて行う鑑定と、メールや動画で結果を届ける鑑定は、役務の性質が違います。前者は鑑定者の時間を確保することに価値があり、後者は鑑定に着手した後の作業に価値があります。キャンセルの扱いも、前者は時間の枠が空いたことによる損害が中心になり、後者は着手後の作業が中心になります。1つのキャンセル条項で両方を扱うと、どちらにも合わない内容になります。
事務所が点検・改訂したタロットリーディングの規約は、予約制のリーディング(対面とオンライン)、納品型のリーディング(動画とメール)、継続セッション、オプションのリーディングという形に分けて、それぞれに申込み、日程、遅刻、不参加、鑑定後の質問、キャンセルの規定を置く構成でした。原案では、お客様都合のキャンセルや返金を、鑑定の実施前を含めて一切拒否していました。これは、消費者契約法9条1項1号の観点から最も大きな問題でした。改訂では、時期に応じたキャンセル料の段階を設け、算定の根拠を条文に書いています。以下では、その考え方を一般化して解説します。
鑑定の形ごとの違い
| 形 | 時間・作業の性質 | キャンセルで考慮する損害 | 主な規定 |
|---|---|---|---|
| 予約制(対面・オンライン) | 鑑定者の時間の枠を確保する | 枠を他の人に充てることの難しさ、決済手数料 | 日程調整、変更、遅刻、不参加、通信障害、運営者側の事情 |
| 納品型(メール・動画) | 情報を受け取ってから鑑定を行い、結果を届ける | 鑑定に着手した後の作業、決済手数料 | 受付の通知、納品の期限、情報が届かないときの催告、保存と視聴の期間 |
| 継続セッション | 一定期間に複数回を実施する | 期間中の体制の確保、実施済みの回数 | 回数と期間、解約、未実施分の扱い、運営者の都合による中止 |
形ごとの規定が揃っていれば、オプションを付ける場合も「付加される鑑定の形の規定に従う」と書くだけで足ります。
予約制の鑑定:日程の調整から、不参加の扱いまで
予約制の鑑定で、まず決めるのは、日程の調整の手順です。契約が成立してから、いつまでに調整を始め、いつまでに鑑定を実施するのか。この期限が書かれていないと、お客様が「いつまで待たされるのか分からない」と感じ、運営者の責めに帰すべき遅れが生じたときの解除の根拠もなくなります。たとえば、契約の成立後、一定の営業日以内に日程の調整を始め、成立日から一定の日数以内に実施するように調整する、と書きます。運営者の責めに帰すべき事由で期限までに実施できなかった場合に、お客様が契約を解除でき、全額の返金を受けられる旨も添えます。
予約制の鑑定の時間軸(取り決めておく事項)
- 契約の成立承諾の通知が到達した時、または入金を確認した後の承諾の通知が到達した時に成立します。成立の時点を、販売の経路ごとに書きます。
- 日程の調整成立から一定期間内に、運営者が調整を開始します。お客様の希望日時を基に協議して決めます。
- 変更の受付実施予定の一定時間前まで(例:24時間前まで)に連絡が到達すれば、1回に限り無償で変更できる、などと決めます。連絡の到達した時刻で判断します。
- 遅刻実施予定時刻から一定時間は待機し、終了予定時刻は延長しない、と決めます。待機の時間を書いておくと、「待っていてくれなかった」「無断不参加ではない」という争いを防げます。
- 不参加・直前の取消し連絡なく一定時間を過ぎた場合、または期限を過ぎた取消しの場合は、実施したものとみなす、と決めます。
- やむを得ない事情急病、事故、親族の急病や死亡、災害、交通機関の運休、停電など、利用者に責めのない事情があるときは、連絡のうえ、日程を再調整する例外を置きます。
- 運営者側の事情運営者の遅刻や通信環境の不具合のときは、再調整して実施するか、実施できなかった時間の割合に応じて返金するか、お客様が選べるようにします。
「一定時間前まで」という書き方だけでは、期限が決まりません。何時間前なのか、何日前なのかを数字で書きます。
遅刻と通信障害の扱いも、規約に書かないと争いの原因になります。オンラインの鑑定で、開始時刻を過ぎたら「直ちに」終了とする書き方は、通信が少し遅れただけでも不参加になってしまい、厳しすぎる印象を与えます。お客様側の端末や回線の不具合で鑑定を開始できなかったときの扱い(実施したものとみなす、または協議して振替)、運営者側の通信環境の不具合のときの扱い(再調整、または割合に応じた返金)を、別々に書きます。
営業所以外の場所、たとえばホテルのラウンジやレンタルルームで対面の鑑定を行うときは、場の設定が特定商取引法の訪問販売の問題に関わります。鑑定そのものを営業所以外で行うだけでなく、その場で継続セッションなどの申込みを受けると、訪問販売(2条1項)に当たるおそれがあり、書面の交付と8日間のクーリング・オフに対応する必要が生じます。対面の鑑定は鑑定のみとし、継続の申込みは別途、販売ページで行う運用にする方法があります。
納品型の鑑定:メール・動画で結果を届ける場合
メールや動画で鑑定結果を届ける形は、鑑定の着手と納品の流れを、時系列で書きます。契約の成立後、お客様が相談内容や生年月日などの情報を運営者に伝える。運営者は、情報を受け取ってから一定期間内に、鑑定に着手する旨を通知する(受付完了通知)。通知の日から一定期間内に、結果を送る。この三つの時点が決まっていれば、キャンセルの段階も、遅延の責任も、書きやすくなります。
- お客様が情報を伝えてこないとき:契約の成立から一定期間内に情報が届かなければ、相当の期間を定めて催告し、それでも伝えられないときは、その期間の満了の日にキャンセルがあったものとみなして精算する、と書きます。
- 運営者が納品しないとき:期限までに結果を送らないときは、お客様が相当の期間を定めて催告し、その期間内に送付がなければ、契約を解除できる。この場合は全額を返金する、と書きます。
- 保存と視聴:動画の視聴用URLを、送付から一定期間以上視聴できる状態に置く。結果の保存は運営者の義務ではなく、お客様が必要に応じて自ら保存する、と書きます。
- 動画の長さ・分量:おおむねの長さや分量を書いておくと、「短い」という不満を減らせます。
納品型では、結果を送った時点でサービスの提供が完了します。完了した後のキャンセルは認めない、と書くことは自然ですが、完了の時点を明確にしておく必要があります(結果を送付した時、予約制では実施したものとみなされた場合を含む)。この定義がないと、「届いたけれど見ていない」という主張に対する説明ができません。
鑑定後の質問:回数・期間・回答の期限を数字で決める
鑑定の後に質問を受けるサービスは、お客様にとっての魅力の一つですが、決まりがなければ、いつまでも続く可能性があります。規約には、質問できる期間(鑑定結果の送付の日、または実施の日を含めて何日間)、質問できる回数、1回の質問の数え方(一度に送るメッセージの一連のもの)、運営者が回答する期限(受信から何日以内)を書きます。期間と回数を超える質問には回答の義務を負わず、新たに申し込めば改めて鑑定を受けられる、という整理にします。
鑑定後の質問の規定の書き方
質問の期限
質問の期間を超えたことを理由に、苦情や追加の購入までを「禁止」とすると、正当な苦情や新たな申込みを封じる条項になり、消費者契約法10条の問題になります。期間後の質問は新しい申込みとして受ける、と書きます。
質問の範囲
回答するかどうかを運営者の裁量だけで選べる書き方だと、役務の内容(分量)が特定されません。回答しない質問の基準を規約に示します。
キャンセル料は、時期の段階と算定の根拠で組み立てる
お客様の都合によるキャンセルで、キャンセル料を取るなら、消費者契約法9条1項1号の「事業者に生ずべき平均的な損害の額」を超えない範囲にしなければなりません。この額は、解除の事由、時期などの区分に応じて、同種の消費者契約の解除に伴い事業者に生ずる平均的な額です。鑑定の実施の前に取り消された場合と、直前に取り消された場合と、納品の直前に取り消された場合とでは、事業者の損害の額が違うため、時期ごとの段階に分けるのが自然な設計です。
キャンセル料の段階の組み立て例
| 形と時期 | キャンセル料の考え方 | 考慮する損害 |
|---|---|---|
| 予約制:実施予定の24時間前まで | 決済手数料などの実費のみ(返金しても戻らない額) | 枠を他の人に充てられる可能性が高く、損害は実費が中心 |
| 予約制:24時間前を過ぎた後 | 料金の全額(やむを得ない事情があれば例外) | 直前の枠を埋めることの難しさ。時間を確保した対価 |
| 納品型:受付完了通知の後、一定の日数まで | 決済手数料などの実費のみ | 着手直後で、作業はほとんど進んでいない |
| 納品型:その後、結果の送付前まで | 実費に、料金の一定割合を加えた額 | 着手後の作業の程度に応じた損害 |
| 納品型:納品の期限を過ぎても未送付 | キャンセル料は零 | 運営者の遅れに起因し、お客様に負担させる理由がない |
| 継続セッション:第1回の実施前 | 実費のみ | 体制の確保はあるが、実施はこれから |
| 継続セッション:第1回の実施後 | 実施済みの回数に応じた対価と、算定根拠を説明できる解約手数料を控除 | 期間中の体制の確保、実施済みの回数 |
数字(時間や割合)は、事業ごとの実態に合わせて決めます。表のとおりに書くのではなく、算定の根拠を自分の事業で説明できる形にすることが大切です。
継続セッションでは、実施した回数が解約の時点の基準になります。解約の通知が到達した時までに実施した回(遅刻や不参加により実施したものとみなされた回を含む)の数に、料金を回数で割った額を掛けた額が、提供済み部分の料金です。既払額から、提供済み部分の料金と解約手数料を引いた額を返金し、控除額が既払額を超えるときは、その差額だけをお客様が支払い、それ以外に未払分の支払義務は負わない、という整理にすると、お客様にとっても分かりやすい設計です。運営者の責めに帰すべき事由で実施できなかった回は、継続の期間の満了後の一定の期間内に実施するか、その回数分を返金するか、お客様の選択に任せます。お客様が日程の候補を示されても30日以上応答しない場合は、相当の期間を定めて催告したうえで、その期間の満了の日に解約があったものとみなして精算する、という定めも、運営の実際には役立ちます。
条文には、キャンセル料の額が、キャンセルの時期の区分に応じて運営者に生ずべき平均的な損害の額を勘案して定めたものであること、お客様から求められたときは算定の根拠の概要を説明することを書いておきます。消費者契約法9条2項は、損害賠償の額の予定や違約金の定めに基づいて支払を請求する場合に、消費者から説明を求められたときは、算定の根拠の概要を説明するよう努めなければならないと定めています。規約自体がその説明を兼ねる形にすると、運用が安定します。
返金の方法も、規約に書きます。決済サービスの取消しや返金の手続を通じて行うのか、指定された口座への振込で行うのか。何日以内に返金するのか。返金に要する費用(振込手数料)は誰が負担するのか。運営者側の事情による返金は運営者が負担し、お客様の都合による返金は、お客様が負担する、と分けて書くのが一般的です。
外部の販売サービスとあわせて売るときの注意
占い師は、自分のサイトだけでなく、ネットショップ作成サービス、スキルマーケット、動画講座の販売サービスなど、複数の場所で鑑定や講座を売ることが多くなっています。その場合、同じ内容の鑑定でも、販売する場所によって、契約の成立の時期、申込みの手続、キャンセルや返金の手続が違います。規約は、場所ごとに次のような整理が必要です。
販売の場所ごとの規約の整理
| 場所の例 | 契約の成立と手続 | 規約との関係 |
|---|---|---|
| 自社のサイトやネットショップ作成サービス | 運営者が支払の確認の後、承諾の通知を送り、到達した時に成立(自動送信の注文確認メールは承諾の通知にあたらないと書く) | 購入時の必須選択項目で規約への同意を取る運用が有効。承諾の通知は電磁的方法の承諾を得て行う |
| スキルマーケット | 取引の申込み、支払、取消し、返金の手続は、サービス提供者のプラットフォーム規約による | 規約とプラットフォームの規約が異なるときの優先順位を決める。プラットフォーム外での連絡や取引の禁止にも従う |
| 動画講座の販売サービス | 成立の時期や代金の支払は、そのサービスの規定による | 動画講座の視聴期間、提供の終了時の返金、同時に複数人で視聴しないことなどは、規約で補う |
同じ規約を複数の場所で使うときは、場所ごとに異なる手続を、規約の中で場所別に書き分けます。
規約は、同意を取る場面が整っていなければ、契約の内容になりません。ネットショップ作成サービスで、購入の際に規約への同意を必須の選択項目とする運用は、定型約款(民法548条の2第1項)の「契約の内容とする旨の合意」にあたると考えられます。一方で、申込みの後に規約を示した場合、その規約は契約の内容にならないおそれがあります。規約は購入前に示し、同意の記録が残る形にします。電磁的方法による通知(特商法13条)についても、規約への同意とは別に、お客様の承諾を得る画面を設けることが確実です。
鑑定結果と感想の使い方
鑑定結果の文章や動画は、運営者の著作物であり、お客様は私的な利用の範囲で使えるにとどまります。第三者への開示やSNSへの掲載を、運営者の許可なく行わないことを規約に書きます。ただし、事実に基づく感想や評価の表明、苦情の申出、法令に基づく権利の行使を妨げない旨も添えます。反対に、運営者がお客様の感想を宣伝に使うときは、あらかじめ個別に同意を得て、匿名または同意を得た表示の方法で使い、同意をいつでも将来に向かって撤回できるようにします。鑑定の録音・録画や、運営者による記録の取扱いは占い相談の個人情報と守秘で詳しく解説しています。
予約・キャンセル規定の点検
- 鑑定の形(予約制・納品型・継続)ごとに、期限と精算を分けて書いている
- 変更・取消しの期限を、時間または日数の数字で書き、到達時刻で判定する旨を書いている
- 遅刻、不参加、通信障害、運営者側の事情の扱いを、別々に書いている
- キャンセル料を時期の段階で設け、算定の根拠を条文で示している
- 鑑定後の質問の期間、回数、回答の期限を書いている
- 販売する場所ごとの契約成立の時期と、プラットフォーム規約との優先順位を書いている
キャンセルの設計は、オンライン鑑定の利用規約の他の条項と、高額コースの返金条項とも整合させる必要があります。
よくあるご質問
鑑定の当日にキャンセルされた場合、料金を全額請求してよいですか?
鑑定の直前の枠を他の人に充てることが難しい事情があれば、時期に応じて高い割合を設定することは可能です。ただし、キャンセル料は事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分が無効になります(消費者契約法9条1項1号)。急病など利用者に責めのない事情がある場合の例外を置き、算定の根拠を説明できるようにします。
遅刻したお客様の鑑定時間は延ばさなくてよいですか?
規約に、一定時間は待機するが終了予定時刻は延長しない、と書けば延ばす義務は生じません。待機時間を書き、一定時間を過ぎたら実施したものとみなす、と決めておくと運用が明確になります。運営者側の遅刻の場合は、再調整または割合に応じた返金を別に定めます。
メール鑑定で、お客様が情報を送ってこないままの場合はどうなりますか?
契約の成立から一定の期間内に情報が届かないときは、相当の期間を定めて催告し、それでも届かなければ、期間の満了の日にキャンセルがあったものとみなして精算する、と規約に書きます。催告の手段(メールとLINEなど)も決めておくと確実です。
鑑定後の質問に、何回でも答える必要がありますか?
規約で期間と回数を決めていれば、それを超える質問に回答する義務はありません。ただし、販売ページの表示と規約が食い違わないようにし、期間と回数を超えた質問は新たな申込みで受ける、という書き方にします。
スキルマーケットで受けた鑑定にも、自分の規約が使えますか?
申込み、支払、取消し、返金の手続は、プラットフォームの規約が優先するのが通常です。自分の規約は、鑑定の性質や質問の範囲など、プラットフォームが定めていない部分を補う位置づけにし、両者が異なるときの優先順位を規約に書きます。
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