AI占いアプリ・AI鑑定の利用規約と責任の書き方

AIが鑑定文を作る占いサービスでは、占いの規約に、AIならではの論点が加わります。AIであることの表示、誤りの責任、入力情報、出力の権利、外部AIの変更と課金の順に整理します。

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このページの要点

  • AIが鑑定文を作ることは、規約・申込み画面・結果画面・広告の四か所で同じ内容に揃え、占い師の関与の範囲は具体的に書く。
  • 責任の制限は、故意又は重大な過失の除外を、上限を定める一文の中に書く。「重過失がない限り一切責任を負わない」は消費者向けでは無効になる。
  • 生年月日と相談内容を外部のAIに送るなら、送信先の名称と所在国を示し、「学習に使わない」は契約条件を確認した範囲で書く。
  • 出力は、帰属の宣言より、利用の範囲の許諾と禁止事項で書く。外部AIの停止に備え、未提供分の返金の計算方法を決めておく。

最初に結論:AI占いの規約は、占い師の鑑定の規約に「AIならではの6つ」を足して作る

結論AIが鑑定文を作る占いサービスの規約は、占いの規約の骨格(結果を保証しない、最終判断は本人、対象外の事項、不安をあおらない)をそのまま土台にして、AIならではの6点を足します。AIが作っていることの表示、誤りや不適切な出力の責任、生年月日と相談内容の入力先、出力の権利、外部AIの変更や停止、課金とサービス終了時の精算です。

ここでいう「AI占い」は、利用者が生年月日や悩みを入力すると生成AIが鑑定文を返すアプリやチャット、占い師の見立てをAIで文章に整えて届ける形、実在の占い師の型や口調を設定した「AI版の占い師」を指します。占い師が個別に鑑定する形の規約の基本は、オンライン鑑定の利用規約に必要な条項にまとめています。このページは、そこにAIが加わったときに増える論点に絞ります。一般的な生成AIサービスの規約の作り方は、同じ事務所の別のサイトにある生成AIを使うサービスの利用規約の全体像で扱っているため、ここでは占いに特有の部分を中心に書きます。

実務でよく見られる規約の多くは、占いの論点とAIの論点のどちらか一方しか想定していません。占いの規約だけでは、相談内容が外部のAI事業者に送られることが抜け、一般的なAIサービスの規約だけでは、「生死や病気は鑑定しない」といった占いならではの線が抜けます。

AI占いの規約で足す6つの論点

論点占い師が鑑定する場合との違い書かないと起きやすいこと
1 AIであることの表示鑑定しているのが人かAIかが、利用者に分かりにくい人が見立てたと思って課金したという主張。取消しや返金の争い
2 誤りと不適切な出力同じ入力でも文章が変わる。想定外の断定や不安をあおる文が出ることがある全部免責の条項が無効になり、運営者を守れない
3 入力される情報生年月日や悩みが外部のAI事業者に渡る利用目的の欠落、要配慮個人情報の同意の欠落、外国の事業者への提供の整理の漏れ
4 出力の権利鑑定文は人の創作とは限らず、他の利用者に似た文が出る帰属を書いても権利が生じず、転載や転売を止める根拠もない
5 外部AIの変更・停止鑑定の中身や品質が、運営者の知らないところで変わる変更のたびに規約を直す事態、停止時の返金をめぐる争い
6 課金と終了回数券、ポイント、月額課金が組み合わさりやすい未使用分の扱い、自動更新、解約の導線をめぐる苦情

「AIが鑑定している」ことを、利用者にどう伝えるか

AI占いで最も多い争いは、「人の占い師が見てくれていると思った」という誤認から始まります。画面に占い師の名前や写真、人が書いたような口調が並んでいると、規約の隅に「AIを利用しています」と書いてあっても、受け止め方は変わりません。表示は、規約、申込みの画面、結果の画面、広告で揃えます。

事業者が勧誘に際して、重要事項について事実と異なることを告げた場合、消費者はその契約の申込みを取り消すことができます(消費者契約法4条1項1号)。人が鑑定するかのように告げて、実際にはAIが生成していた場合は、取消しの主張を受ける土台になり得ます。鑑定の担い手は、料金を払うかどうかの判断に通常影響する事項です。広告の側では、実際より優れているかのように示す表示は、景品表示法が禁じる優良誤認に当たるおそれがあります。「的中率」「精度」の数字を載せるときは、根拠となる調べ方を持っていることが前提です。広告表示の詳しい注意は占い師の広告表示で解説しています。

占い師が「監修」している形では、監修の範囲を正確に書くことが要になります。設計に関わっただけなのか、個々の結果を確認しているのかで、利用者の期待がまったく違うためです。

AIであることの表示の書き方

AIが鑑定する旨

避けたい言い方本サービスの鑑定結果には、人工知能を用いて作成される部分があります。
書き換え例本サービスの鑑定文は、利用者が入力した情報をもとに、生成AIが自動的に作成します。占い師個人が、個々の鑑定文を読んで作成するものではありません。

「作成される部分がある」では、どこまでがAIか分かりません。誰が何をするのかを主語を立てて書きます。

占い師の監修

避けたい言い方有名占い師が監修した本格的な鑑定です。
書き換え例鑑定の考え方と文体の設計に、占い師である〇〇が関与しています。個々の鑑定文は、占い師が確認したものではありません。

監修の対象を、設計の段階か、個々の結果かに分けて書きます。確認している範囲があるなら、その時点と件数も書きます。

一か所でも「人が見ている」ように読める表現が残ると、他の三か所の説明が効きません。

AI鑑定の性質に関する条文例

1本サービスの鑑定文は、利用者が入力した情報をもとに、運営者が選定した生成AIが自動的に作成するものであり、運営者又は占い師が個々の鑑定文の内容を事前に確認するものではない。ただし、運営者は、鑑定文の作成の基準及び表現の方針を、占い師の関与のもとに定める。

2鑑定文は、利用者が状況や気持ちを整理し、今後の選択を考えるための示唆であり、将来の出来事、恋愛の成就、願望の実現その他の特定の結果を保証するものではない。

3同一の情報を入力した場合であっても、生成AIの性質上、作成される鑑定文の内容及び表現は、その都度異なることがある。運営者は、鑑定文の再現性を保証しない。

4利用者は、自己の人生に関する重要な判断を、自己の意思と責任において行う。

第1項ただし書の「関与」の中身は、実際の運用に合わせます。

外れた、不適切だったというとき、運営者の責任はどう書くか

AIの鑑定文が「外れた」と感じられること自体は、約束していない範囲です。問題になるのは、AI特有の二つの場面です。一つは、同じ入力でも文章が毎回変わる点です。再現性を保証しない旨を書けば説明できますが、広告で「あなただけの鑑定」と見せているなら、実際の動作と食い違わないかを確かめます。もう一つは、想定していない出力が出る点です。生死や病気を断定する文、投資や賭け事の結果を言い切る文、相談者の不安を強める文が、AIから出ることがあります。

占いの規約では、生死・病気・投資・第三者の探索などを対象外とすることが多いのですが、AIではこの線が運用で守られるかが別の問題になります。入力の段階で受け付けないのか、出力の段階で文を変えるのか、何もしないのかで、書き方が変わります。検知や案内の仕組みを持っているのに「確認する義務を負わない」とだけ書くと実態と食い違い、仕組みがないのに「当社が対応します」と書けば、できないことを約束することになります。実際に行うことだけを、範囲と時点を限って書きます。

責任の書き方では、利用者が消費者である場合の消費者契約法の規律が中心になります。事業者の債務不履行による賠償責任の全部を免除する条項は無効です(8条1項1号)。債務の履行に際しての不法行為による責任の全部の免除も同様です(同項3号)。責任の一部を免除する条項でも、事業者に故意又は重大な過失がある場合にまで及ぶ書き方は無効です(同項2号・4号)。そして、軽い過失の場合の一部免除であっても、当該条項が「重大な過失を除く過失による行為にのみ適用される」ことを明らかにしていなければ無効です(8条3項)。実務で多い書き方がどう判断されるかを、次の表にまとめます。

免責・責任制限の書き方と、消費者契約法8条による評価

よくある書き方評価直し方
理由の如何を問わず、運営者は一切責任を負わない責任の全部の免除。8条1項1号・3号で無効。故意又は重大な過失まで免除する趣旨なら、同項2号・4号にも当たる免除ではなく、サービスの性質(保証しない範囲)を書く。責任の限度は次の行の形にする
運営者の故意又は重過失がない限り、一切責任を負わない軽い過失の場合の責任を全部免除するもの。除外を書いても、8条1項1号・3号の問題が残る全部免除をやめ、軽い過失の場合の「上限」の形にする
責任は、利用者が支払った直近の利用料金を上限とする(除外の記載なし)故意又は重大な過失の場合まで上限をかけるもの。8条1項2号・4号の問題と、3項の問題上限を定めるその一文の中に、故意又は重大な過失の除外を書く
当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、賠償は直近◯か月分の利用料金を上限とする一部免除であり、重大な過失を除く過失による場合にのみ適用されることが明らかな形。8条3項の要件に沿う上限額が極端に低くないかを、10条の観点から点検する

無料で使える利用者について、上限を「0円」とする書き方は、実質的に責任の全部の免除と評価されるおそれがあります。

上限額の金額の根拠は、説明できるようにしておきます。たとえば月額1,480円のプランで直近1か月分とすると上限は1,480円、直近12か月分とすると17,760円です。個人情報の漏えいのように、損害が利用料金と釣り合わない事故があり得るサービスで上限が1か月分にとどまる場合は、10条の評価を受けやすくなります。

責任の制限に関する条文例

1運営者は、本サービスに関して利用者に対し損害賠償責任を負う場合、当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、利用者に現実に生じた通常の損害に限り、賠償する。

2前項の場合において、運営者が賠償する額は、当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、損害の原因となった時から遡って12か月間に利用者が運営者に支払った利用料金の総額を上限とする。ただし、利用者が無料で本サービスを利用していた場合は、〇〇円を上限とする。

3前二項は、運営者が本規約に従って返金すべき利用料金には適用しない。

上限は、除外の記載を上限を定める一文の中に置きます。別の条に「故意又は重大な過失の場合は適用しない」と書いても、8条3項の関係では足りません。無料利用者向けの金額欄は、運用に合わせて決めます。

生年月日と相談内容をAIに入れるとき、個人情報をどう整理するか

AI占いでは、利用者の入力が運営者のサーバーを経由して、外部のAI事業者のサービスに渡るのが一般的です。ここで運営者が整理する点は、(1)どの情報を、(2)何のために取り、(3)誰に渡し、(4)どこに、どれだけの期間残るか、の四つです。占い師が個別に鑑定する場合の個人情報の基本は占い相談の個人情報と守秘義務で解説していますので、ここではAI特有の部分に絞ります。

入力から保存までの流れと、確認する点

段階何が起きるか確認すること(根拠)
入力生年月日、出生地、悩みの文章、写真が入力される。悩みの中に、病歴や信条が含まれることがある利用目的を特定して示す(個人情報保護法17条・21条)。要配慮個人情報を取得するには、あらかじめ本人の同意が要る(20条2項)
鑑定文の生成入力が外部のAI事業者に送られる利用目的の達成に必要な範囲で取扱いを委託する形なら、提供先は第三者に当たらない(27条5項1号)。委託先の監督(25条)と安全管理(23条)は運営者に残る
外部事業者の側事業者が入力を保存したり、品質改善に使ったりする契約条件のことがある契約条件で、入力が事業者の学習に使われるか、保存期間はいつまでかを確認する。外国の事業者なら、外国にある第三者への提供の整理が必要(28条)
運営者の側鑑定履歴の保存、品質改善のための閲覧や分析利用目的の範囲を超えて使わない(18条)。不要になったら消去するよう努める(22条)

28条の整理は、委託として提供する場合にも関わります。同意を得る場合は、あらかじめ、その外国の制度や、提供先が講ずる保護措置などの情報を本人に提供することが求められます(28条2項)。

よく見られる誤りが二つあります。一つは、外部のAIサービスに入力を送っているのに「外部との自動通信は基本的に発生しない」と書くなど、実際の動作と食い違う例です。もう一つは、「入力を学習に使用しない」と書く例です。運営者自身の約束としては成立しますが、外部のAI事業者の扱いはその契約条件によるため、確認せずに断言すると実態と合わなくなります。「当社は、利用者の入力情報を、AIモデルの学習に使用しない。外部の事業者が入力情報を学習に使用しない契約条件を選択している」と、運営者の約束と契約条件の確認結果を分けて、確認できた範囲で書きます。

入力欄の設計も見直します。悩みを自由に書ける欄は、病歴や、交際相手の氏名や勤務先などの第三者の情報が入りやすい欄です。注意書きで入力しないよう促しても入力される前提で、取得した場合の扱いと同意の取り方を書いておきます。選択式の項目を増やして自由記述を減らす方法もあります。

入力情報と外部AIの利用に関する条文例

1運営者は、利用者が入力した生年月日、出生に関する情報及び相談の内容(以下「入力情報」という。)を、鑑定文の作成、鑑定履歴の表示、不正利用の防止及び本サービスの品質の維持のために利用する。

2運営者は、鑑定文の作成のために、入力情報の取扱いを、運営者が別に定める外部のAI事業者(以下「AI提供事業者」という。名称及び所在国は、プライバシーポリシーに表示する。)に委託し、入力情報をAI提供事業者に送信する。

3運営者は、入力情報を、運営者のAIモデルの学習に使用しない。運営者は、AI提供事業者との間で、入力情報がAI提供事業者のAIモデルの学習に使用されない条件を選択している。

4利用者は、病歴、信条その他の要配慮個人情報、及び第三者の個人情報を、入力情報に含めないよう努める。利用者がこれらを入力した場合、運営者は、その入力情報を、鑑定文の作成に必要な範囲で取り扱うことについて、利用者の同意があったものとして取り扱う。

第3項の第2文は、契約条件を実際に確認できた場合に限って書きます。第4項は、画面上の別の確認で同意を取ることが前提です。

AIが作った鑑定文は誰のものか:出力の権利と転載の線

AIの出力の権利は、「利用者に帰属させる」と書けば解決するものではありません。著作権法で保護される著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」です(著作権法2条1項1号)。文化審議会著作権分科会法制度小委員会の「AIと著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)は、生成AIへの指示が表現に至らないアイデアにとどまる場合は、AI生成物に著作物性は認められないと考えられると整理しています。著作物性は個々の生成物ごとに、指示・入力の分量と内容、生成の試行回数などを要素に、創作的寄与を総合して判断されるとされています。生年月日と短い悩みを入れただけで返ってきた鑑定文には、著作物性が認められない場合が多いと考えられます。

そうなると、「出力の著作権は利用者に帰属する」と書いても、権利が生じていない文章に対する約束になります。「運営者に帰属する」と書いても、利用者の転載を止める根拠にはなりません。帰属の宣言よりも、出力をどこまで使ってよいかという「利用の範囲の許諾」と、禁止する使い方を書くほうが、実務では役に立ちます。

  1. 同じ文が他の利用者にも出る可能性:AIは、同じ入力に似た出力を返すことがあります。占いでは「私だけに向けた鑑定」という期待があるため、出力が独占的なものではないことを明記する意味があります。
  2. 利用者の使い方の許諾:個人の範囲で閲覧し、保存し、判断の参考にすることは認めます。SNSへの投稿や他の人への転送を認めるかは、サービスの方針で決めます。
  3. 禁止する使い方:出力をそのまま第三者への有料の鑑定として販売すること、競合するサービスの開発のためにまとめて抜き出すこと、占い師の名義を使った広告に流用することを書きます。
  4. 運営者の資産の保護:指示文(プロンプト)、鑑定の基準、占い師の知見を反映した設定は営業上の資産です。解析、抽出、模倣を禁止します。
  5. 利用者の入力の取扱い:入力した文章に著作物性がある場合に備えて、運営者が鑑定の提供や品質の維持のために、無償で複製し、分析できる旨の許諾を書きます。

著作権法30条の4は、思想又は感情の享受を目的としない利用(情報解析など)を、著作権者の利益を不当に害する場合を除いて認めています。ただし、これは著作権法上の話に限られ、入力に含まれる個人情報の利用目的や、利用者との契約で何を約束したかは別に残るため、入力の使い方は規約とプライバシーポリシーで明示します。

出力の取扱いに関する条文例

1鑑定文その他本サービスを通じて利用者に提供される出力(以下「出力」という。)は、利用者の個人的な利用の範囲で、閲覧し、保存し、及び自己の判断の参考にすることができる。

2運営者は、出力が、他の利用者に対する出力と同一又は類似することがあることを、利用者に対して告知し、利用者は、これを承諾する。

3利用者は、運営者の事前の承諾なく、出力を、第三者に対する有料の鑑定として提供し、又は運営者若しくは占い師の名称を用いた広告に使用してはならない。

4利用者は、出力又は本サービスの画面から、運営者の設定、指示文、鑑定の基準その他の営業上の情報を、解析し、抽出し、又は第三者に提供してはならない。

5運営者は、出力が第三者の権利を侵害しないこと、並びに出力に著作権その他の権利が生じることを保証しない。

「出力に権利が生じることを保証しない」を第5項に置くのは、権利の帰属を約束したと受け取られないためです。出力の公開を認める範囲は、サービスの方針に合わせて第1項を広げます。

外部AIが変わる・止まるときの変更権限と、課金・精算の設計

AI占いの品質は、運営者が選んだ外部AIサービスの仕様に左右されます。事業者が内部のモデルを入れ替えれば、同じ入力でも鑑定文の調子が変わります。提供が終了すれば、サービスそのものが成り立たなくなります。規約は、この変動を前提にして、サービス内容の変更の権限と、利用者への周知、止まったときの精算を決めておく必要があります。

実務でよく見られる失敗は、特定の外部サービスの名前、プラン名、年を規約の本文に書き込む形です。事業者やプランが変わるたびに規約の改定が必要になります。本文には「運営者が選定する外部のAI事業者のサービスを利用する」と類型で書き、事業者名と所在国は、プライバシーポリシーの一覧に出して更新するほうが扱いやすくなります。

規約の変更の条件は、民法548条の4が定めています。変更が相手方の一般の利益に適合するとき、または、契約をした目的に反せず、変更の必要性や内容の相当性などに照らして合理的なときに、個別の合意なく変更できます。ただし、効力発生時期を定め、変更する旨と内容をインターネットなどの適切な方法で周知しなければならず、合理性を根拠とする変更は、効力発生時期までに周知しなければ効力を生じません(同条2項・3項)。「いつでも変更でき、使えば同意したものとみなす」とだけ書く規約は、この周知の記載が足りません。料金や回数は「運営者が別に定め、サービス上に表示する」形にして、規約の本文には変わらない権利関係と責任の定めを置くほうが運用に合います。すでに支払った期間の分に不利益な変更を及ぼす書き方は避けます。

外部AIの停止や、運営者の事業判断によるサービスの終了では、精算の定めが争いの中心になります。運営者の側の事情で提供ができなくなった場合に、「いかなる場合も返金しない」として未提供分まで返さない書き方は、利用者の利益を一方的に害するとして争われやすくなります(消費者契約法10条)。提供期間に応じた日割り計算で未提供分を返金する書き方が、無理のない型です。年額12,000円を前払いした利用者に、7か月が経過した時点でサービスを終了する場合は、12,000円を12か月で割った1,000円に、未提供の5か月を掛けて、5,000円を返金する計算になります。回数券やポイント(クレジット)の形で売る場合は、未使用の分をどう扱うかを書きます。

書き方のポイントポイントやコインの形で前払いを受ける場合は、前払式支払手段として別の規律が及ぶことがあるため、設計の段階で所管の資料に当たって確認します。

課金の導線は、通信販売の表示と合わせて整えます。自動更新の月額課金では、更新の時期、解約の方法と期限、解約後の扱いを、申込みの確定の前に見える位置に表示する必要があります(特定商取引法の通信販売の表示と、申込みの最終確認画面の表示の規律。詳しくはオンライン鑑定の利用規約に必要な条項)。消費者向けの価格は、税込の総額で表示します(消費税法63条)。アプリストア経由の課金は、各ストアの規約と整合させます。

課金設計で見落とされやすいのは、演出の問題です。結果の画面で不安を強める文を出して、追加のポイントの購入に誘導する作りは、苦情と取消しの主張を受けやすくなります。AIがその場で生成する文は、運営者が事前に確認できません。課金への誘導の文面は運営者が確認した固定の文に限る設計にすると、自主規制の条項と実際の動作が一致します。霊感などを用いた不安のあおりの規律は霊感商法と契約の取消し、長時間・高頻度の利用への備えは依存と精神的な危機への対応にまとめています。

AI占いの規約で見られる失敗と、直し方

実務で多い規約の誤りを、書き方の型として整理します。いずれも、文言そのものではなく、よく見られる考え方を新しく書き直した例です。

AI占いの規約で見られる失敗と直し方

規約への同意

避けたい言い方本サービスにアクセスし、利用した時点で、本規約に同意したものとみなす。
書き換え例利用者は、会員登録の画面及び有料の申込みの画面で、本規約の内容を確認し、同意する旨の操作を行う。運営者は、本規約を契約の内容とする旨を、これらの画面にあらかじめ表示する。

定型約款が契約の内容になるのは、契約の内容とする旨の合意があるか、あらかじめ表示していた場合です(民法548条の2第1項)。アクセスしただけで同意とみなす書き方は、表示が先にあることが前提です。登録前の画面で表示し、同意の操作を残します。

返金

避けたい言い方理由のいかんを問わず返金しない。返金の可否と方法は、運営者の裁量で決める。
書き換え例利用者の都合による解約では、既に提供した期間又は回数に対応する料金を除き、未提供分を返金する場合の条件と計算方法は、次の各号のとおりとする。運営者の事情で提供できなくなった場合は、未提供分を返金する。

返金を運営者の裁量だけにすると、条件が分からず、苦情の原因になります。返金する場合と、しない場合を事由ごとに書き、計算方法を示します。

未成年の利用

避けたい言い方未成年者が法定代理人の同意を得ずに利用した場合、一切の責任は未成年者と法定代理人が連帯して負う。運営者は、同意の有無に責任を負わない。
書き換え例未成年者は、有料の機能を申し込む前に、法定代理人の同意を得る。運営者は、申込みの画面で、年齢と法定代理人の同意を確認する。

取消しの規定(民法5条2項)は、規約で変えられません。連帯責任の定めにも疑問が残ります。申込み前の確認の導線に置き換えます。

ヒヤリングで確認すること:AIの仕組みを知らないと、規約は書けない

AI占いの規約は、アプリの中でAIがどう動くのかを聞かないと書けません。同じ「AI占い」でも、出力を人が確認するのか、入力を外部に送るのか、履歴を何か月残すのかで、条文が変わります。聞き取りは、次の順に行うと漏れが出にくくなります。

AI占いの規約を書く前に聞くこと

  1. 鑑定文を作っているのは、生成AIだけですか。占い師が確認や修正に関わる場面はありますか。表示の誤認と、「監修」の書き方を決める基礎になります。確認する場合は、対象の件数と時点も聞きます。
  2. 実在の占い師の名前や口調、鑑定の型を使っていますか。その占い師との間で、使ってよい範囲を決めていますか。氏名や鑑定の方法の使用の許諾がなければ、広告や表示で問題になります。契約が終わったときのAIの設定の扱いも決めます。
  3. 利用者が入力する項目は何ですか。自由記述の欄がありますか。写真は受け取りますか。病歴、信条、第三者の情報が入る可能性を測るためです。入力項目が利用目的の一覧に載っているかを照らします。
  4. 入力は、どの外部サービスに送られますか。そのサービスの契約条件では、入力は学習に使われますか。保存期間はいつまでですか。委託の整理、外国にある第三者への提供の整理、「学習に使用しない」と書けるかどうかが、ここで決まります。
  5. 生成された文を、運営者はいつ見ますか。見ない場合、不適切な文を検知する仕組みはありますか。検知や案内の義務を負うか、負わないかを、実際の動作に合わせて書くためです。
  6. 料金は、月額課金、回数券、ポイントのどれですか。アプリストア経由の課金はありますか。精算の計算式、前払式支払手段の検討、返金の窓口、自動更新の導線の設計に必要です。
  7. 外部のAIが止まったり、モデルが変わったりしたとき、どうするつもりですか。変更の権限、周知の期限、終了時の返金の条項に直結します。

運営者が今できていることと、今後する予定のことを分けて聞きます。予定のことを規約に断定して書くと、できなかったときに食い違いが生じます。

AI占いの規約の点検

  • 鑑定の担い手(AI、占い師の関与の範囲)を、規約・申込み画面・結果画面・広告で同じ内容にしている
  • 免責は、全部免除をやめ、故意又は重大な過失の除外を上限の一文の中に書いている
  • 入力情報の項目、利用目的、外部のAI事業者の名称と所在国を、プライバシーポリシーに載せている
  • 「学習に使用しない」は、運営者の約束と、外部事業者との契約条件の確認結果を分けて書いている
  • 出力は、帰属の宣言ではなく、利用の範囲の許諾と禁止事項で書いている
  • 外部AIの変更・停止への対応と、終了時の返金の計算方法を書いている

占いの規約の基本はオンライン鑑定の利用規約に必要な条項、占い師の開業全体の整理は占い師の開業の始め方にあります。あわせて確認してください。

よくあるご質問

AI占いの鑑定文が外れたとき、返金を断ってよいですか?

外れたこと自体は、鑑定の結果を保証していない範囲であり、返金の理由にならないと整理するのが一般的です。ただし、鑑定が提供されなかった、約束した回数や内容と違った、システムの不具合で利用できなかったというときは、返金の対象になり得ます。結果を保証しない旨と、返金する場合の条件は、別々に書きます。

「故意又は重過失がない限り責任を負わない」と書けば、消費者向けでも有効ですか?

有効とはいえません。軽い過失の場合の責任を全部免除する条項は、消費者契約法8条1項1号・3号により無効です。責任を制限するなら、損害賠償の上限の形にして、当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除く旨を、上限を定める一文の中に書きます(8条3項)。

生年月日と悩みを外部のAIサービスに送るとき、本人の同意は必要ですか?

利用目的の達成に必要な範囲で取扱いを委託する形なら、提供先は第三者に当たらず(個人情報保護法27条5項1号)、委託先の監督が必要です。外国の事業者なら、外国にある第三者への提供の整理が必要です(28条)。悩みに病歴や信条が含まれる場合に備えて、要配慮個人情報の取得の同意(20条2項)も整えます。

AIが作った鑑定文の著作権は、利用者のものになりますか?

著作権は、思想又は感情を創作的に表現した著作物に生じます。生成AIへの指示が表現に至らないアイデアにとどまる場合は、著作物性が認められないと考えられるとされています(文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」)。権利の帰属を宣言するより、利用の範囲の許諾と、禁止する使い方を書くことが、実務では有効です。

外部のAIサービスが終了して、アプリを続けられなくなったときの返金は、どう計算しますか?

前払いを受けた期間や回数のうち、未提供の分を返金する形が基本です。たとえば年額12,000円を前払いした利用者に、7か月経過した時点でサービスを終了する場合は、12,000円を12か月で割った1,000円に未提供の5か月を掛けて、5,000円になります。計算方法と返金の手段は、規約に書いておきます。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の事業への当てはめは、提供する内容、料金の受け取り方、勧誘の方法、お客様が事業者か個人かなどによって異なります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 消費者契約法(消費者庁) / 景品表示法(消費者庁) / 国民生活センター

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